CTで輪切りの写真が撮れるわけ  〜ちょっとオタクな話〜
CT(やMRI)で体の輪切り(断層)の写真が撮れることは多くの方がご存知でしょうし,実際
写真を見られたことがある方もたくさんいらっしゃると思います.しかし,なぜ輪切りの写真が
撮れるのでしょう?通常レントゲン写真と言えば,体の後ろにフィルムを置いてレントゲン(X
線)を照射して撮ります.X線は物質を通過するときその物質に一部吸収され通過後は量が減り
ます.体を構成する成分はそれぞれX線を吸収する量が異なります.例えば骨はたくさん吸収し
ますし(X線量が減ってしまう),脂肪は吸収量が少ないです(X線量があまり減らない).実
際のレントゲン写真では骨は白く写り脂肪はやや黒っぽく写ります.言い換えればフィルムにた
くさんX線があたったところは黒く写り,少ししかあたらなかったところは白く写るわけです.
これがレントゲン写真の根本的な原理であり,CTで輪切りの写真を撮るときもこの原理を利用
しています.

さて本題のCTについてですが,CTも所詮一種のレントゲン撮影装置にすぎないのです.ただ
何が違うかといいますと,X線を出す装置とフィルムに相当するX線検出器が対をなして体を中
心軸として体の周りを回転できるようにしてあるわけです. そして体の周りを回転しながら何
度もレントゲン写真を撮ります。この場合のレントゲン写真というのは細いビーム上のX線を照
射して体を通過した後どれだけX線が減っているかを測定するというものです.これで写真を作
る準備はできました.あとはコンピューターのお仕事です.これまで『写真』と表現してきまし
たが,よく見かけるあの輪切りの『写真』は実は『写真』ではなくコンピューターが描いた白黒
の『絵』なのです.つまりあとはコンピューターにいかに絵を描かせるかなのです.話を簡単に
するために下図のマス目を例に話をします.それぞれのマス目部分のX線の吸収する量をそれぞ
れ図のようにA1〜D5とします。このマス目全体にいろいろな方向から決まった量(Y)のX線
を照射したとします.そしてそれぞれX線が通過した方向ごとに通過してきた残りのX線量を測
定します.あとは数学の問題です.たとえば@方向については,もともとYあった量がA1+A2+
A3+A4+A5ぶん吸収され減少してZ1残るわけだから,Y−(A1+A2+A3+A4+A5)=Z1という式
が成り立ちます.Aの方向についても同様にY−(A2+B3+C4+D5)=Z2という式が成り立ちま
す.このような式をたくさん作って順番に連立方程式を解く要領でA1からD5までのマス目がそ
れぞれどれだけX線を吸収するか計算するのです.その答えをもとにそれぞれの吸収度合いに応
じて真っ白から真っ黒までを2000段階(グレースケール)に区切って色を塗り分けていくわけ
です.このマス目を非常に細かくすると実際のCT『写真』のように通常の白黒写真のように見
えるわけです.これは医学史上の大発明でした.ちなみに初期のCTでは1つの輪切り写真を作
るのに5分以上かかっていましたがコンピュータの性能向上と計算方法の進歩また機械の進化に
より現在の最も速い機械では,1枚の輪切りを1秒以内で作ってしまいます.また世界で一番最初
にCTを作ったのはイギリスの会社で,日本に最初に持ち込まれたCTはエリザベス女王の来日
みやげとしてのもので全国の大学病院に数台設置されたのが始まりです.

                       

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