顔の痛み・けいれん
●顔の痛み 〜三叉神経痛〜
顔面の感覚は,三叉神経という脳から直接枝を出す神経によって脳に伝えられます.この神経はその名の通り脳から出てすぐに3本の枝に分かれます.第1の枝は眼球の上を通りおでこの部分を,第2の枝は眼と口の間の領域を,第3の枝は下顎部を担当エリアとしています.三叉神経の伝える痛みは体の中で最も強いと言われますが,歯の痛みが大変強いのはこのためです.さて顔面に発作的に鋭い痛みが走る病気があります.三叉神経痛と呼ばれるものですが,『カミソリで切られたような痛み』と表現されるほど強い痛みです.まずはテグレトールという強い鎮痛効果を持ったお薬で様子を見ますが,あまり効かないことも多く副作用も強いお薬です.薬での治療に限界がある場合次の手段として2つの治療が勧められます.1つは手術です.そもそも三叉神経痛は,三叉神経の枝の付け根が血管によって圧迫されることが原因となっていますので手術で神経と血管の間にスポンジのクッションを入れてくるわけです.これだけで痛みは直後からピタッとおさまります.
簡単に書きましたが脳を触る手術には違いありませんので危険性など十分な納得のもとに行われるべきものです.2つ目の治療は,最近発達してきた方法でガンマナイフという特殊な放射線治療装置で神経の痛みを発している部分を焼いてしまう方法です.20〜30分で治療は終了し手術に比べればはるかに危険性も低いですが,効果が出るまでに1〜数ヶ月かかり,また改善率や再発率も手術に比べるとやや劣り,痛みは消えても顔面の知覚異常を残すことが少なくありません.まだ発展途上の治療法ですが良い成績を出している施設が増えつつあります.最後に,三叉神経痛の診断は意外と難しく,血管による圧迫ばかりでなく脳腫瘍や副鼻腔炎,歯科的問題,心因性など鑑別すべき原因は多数ありますので,まずは詳細な検査による原因の特定が重要です.

●顔のピクツキ 〜顔面けいれん〜
眼の周囲や口の周囲がピクピクとけいれんする病気があります.ひどくなると眼が開けられなくなったり,長期間放っておくと顔の筋肉が萎縮してしまうこともあります.ピクツキの原因は顔の表面の筋肉(表情筋)のけいれんなのですが,この表情筋は三叉神経と同じく脳から直接出る顔面神経という神経によってコントロールされており,三叉神経痛の場合と同じように血管が神経を圧迫することにより引き起こされます.顔面けいれんについては有効なお薬はあまりなく,上で述べたガンマナイフも使えません.最も有効性が高く即効性も期待できる治療法は手術です.やはり神経と血管の間にクッションを入れてくるものです.その他,神経毒であるボツリヌス菌毒素をけいれんを起こしている筋肉に注射する治療法もありますが,効果が数ヶ月で消失しますので繰り返しの治療を要します.顔面けいれんも他に鑑別しなければいけない原因がたくさんあり原因の特定が第一歩となります.

<おまけ> 顔面神経麻痺(ベル麻痺)
上記の病気と良く似た名前の病気で顔面神経麻痺というものがあります.ベルさんが見つけたのでベル麻痺と言われています.これは顔面神経が何らかの炎症(ウイルスなど,詳細な原因不明)で麻痺を起こすもので,ある日突然顔の半分がダランとして眼を完全につむれなくなったり,口の端からよだれがこぼれたり,うがいの時に水が漏れたりといったことで気づかれます.決して怖い病気ではありませんがいち早く治療を開始した方が回復は良いです.また,同じ症状が脳梗塞の初期症状である場合もありますのですぐに専門医へ受診することが重要です.

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